下鴨神社で人形の御祓いがおこなわれるのは、立秋の前夜の夏越神事が詩歌に謳われたり、絵画に描かれたり、とよく知られています。しかしながら人形の御祓いの神事がおこなわれるのは、立秋の前夜だけではありません。一年に立春、立夏、立冬の四回ある節分には、かならずおこなわれる節供(せっく)の御祓いの神事です。立秋の前夜のみ夜中におこなわれますが他は、「夕日のくだり」と称して午後に御手洗の池の御祓いの神さんー井上社で始まります。
人形は、形代(かたしろ)、人像(ひとがた)、撫物(なでもの)、雛形(ひながた)などと呼ばれています。また子供の御祓いの天児(あまがつ)と云うのもあります。地方により、時代による生活環境によって、さまざま呼びならわされていますが、自分の体にうけた穢(けが)れやわざわいを人形に移して、自分の身に代えて川に流し清め、あがなう御祓いの祭具のことです。古墳や遺跡から出土する齋串(いぐし)なども、その一つです。
古代の人形の御祓いの信仰が中世には、「雛流し」とか「流雛」などの風習に展開しました。