京の七不思議、とか、鴨の七不思議、などと、歴史上よくある言い伝えや、古社に纏わるまどうことなど、信じるべきか否か、それこそ迷う説話が多くあるものです。今回は、その一書を採りあげました。
すっかりご無沙汰しましたが、引き続き鴨社資料と言うべきか、どうか、理解しにくいけれども、資料としてよく諸書に登場する書などをみていきたいと思います。
燧―ひうち、石を入れる袋、スイホ、のことを言っているのではないかと思います。現在の市民生活では、家庭でもどこでも、簡単に火を使うことが出来ます。少し前までは、大変でした。火を起こすことから始めなければなりませんでした。それだけに、ひじょうに大切で在り、神聖されていました。燧袋(囊)は、火を起こす大切な火うち石(石英の一種)と火打ち金(鉄片)を入れる袋のこと。ひるがえって、大切なものをしまっておく入れ物、と言う意味をあらわしているのではないかと思われます。
見開きをみると、その袋のことが記されています。「長六寸、幅四寸 袋の口をこまかにひだ取り紐を付け袋の形を三角に成す」とあり、 文末には紀貫之の歌を付したりして、図を添えています。
本文は、「御霊御神体傳」「西惣社」「稲荷社傳」「梅宮社傳」「熱田再奥極傳」「春日四所皇大神宮ノ傳」「春日若宮ノ傳」「内侍所之秘事」「三宝荒神傳」「下加茂本社傳」「御蔭社之傳」「上賀茂社之傳」「熱田傳」との見出しです。
鴨御祖神社の「下加茂本社傳」については、現在の御本宮域を和魂とし、摂社の三井神社域を荒魂と記しています。禰宜家の伝承と祝家の二説を述べています。よって、「御蔭社之傳」では、「御本社の艮の位に当れり、此天気の始め、生気の元、御道統の出る本の位にかたとり給り」と、社家の一説を述べています。