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御所ことば・京ことば・賀茂ことばと、 ―式年遷宮の次第書より

今回、第三十四回・式年遷宮は、仮遷宮については、第十四回・元亨二年(一三二二)十二月二十四日、かりどのの御せんぐう、の次第に準じました。


 というのも時代背景がこの時代とよく似ているからです。正遷宮の方は、第八回・建仁元年(一二〇一)十二月十七日の式年遷宮と第二十二回・延宝七年(一六七九)九月十七日、式年遷宮を参考としました。


 第八回・建仁度は、幕府の政治体制に入ったことにより、様々制度の改革があって、官祭は、蔵寮の祭祀から近衛府の祭祀に移行しつある時期であるなど変革の時代となり一方で、第二十二回延宝度は、第二十一回・寛永度から五十年目に式年遷宮としておこなわれた異例ともみるべき大きく変わってしまった御遷宮でありました。


 いずれも、社会から、政治から見放された神社祭祀の有様が今日の混乱した時代と似ているところから参考としました。


 ここでは、そのことではなく、第十四回・元亨度『かりどのの御せんぐう』記をみていると、すでに忘れられた京ことば、御所ことば、殊にまったく消滅した賀茂ことば、が読みとれますのでそのことを記しておきたいと思います。


 平安時代から鎌倉時代の初めごろの儀式次第書は、特定の場合をのぞいて、ほぼ笏紙(宮中の儀式や神社の祭礼の儀礼で神官が威儀を正すために捧持する笏に作法や次第を記した貼り紙のこと。) です。特に祭事奉仕にあたった氏人の次第書は、自分の分だけの笏紙ですから、儀式全体をみることはできません。自分だけのメモですから、京ことば、や御所ことば、あげくのはては、賀茂ことば、まで出てくるしまつです。二,三、記しますと


 〈御前へ参りて かたはやに仮す座のとき 御はらへあるよし れうの座ニしはらく仮すらす くまり也〉


 とあります。お読みになって、何となく想像がつかれようとは思いますが、現在、日常では、ほとんど使う言葉ではありません。

 御前、とは、神前へあがって、ということです。「かたはや」とは、御本宮の前の社殿の名称です。「れうの座ニ」、れう、とは、位階による打敷のこと。殿上でも庭上の儀礼を奉仕する氏人らが座る敷物のことを賀茂ことばでいっています。「仮すらす」もまた、賀茂ことばで「居ずまい、とされます。」という意味です。「くまり也」は、きまりとなっている、ということです



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