実は、既に咲ききって、満開を過ぎて、花のなかには、花びらの色が変わり
かけています。
御手洗の池の堤の両岸は、咲きそろって常の景色を替えています。両岸を白一色に染め、
枝垂れる花色が御手洗川の流れに映えています。
ところが、どうしたことか、烏の縄手の舩島の奈良殿神地の卯の花は、今年も咲きません
でした。
数年前、奈良殿の無社殿神地を整備したとき、植物学者に、
平安時代の『元輔集』に
四月 神まつるところ
卯の花の うちみえまよふ ゆうしてゝ けふこそ神を まつるへらなる
鎌倉時代の『如願法師集』に
社卯花
ゆうしてに まかふ卯の花 うちなひき 神の齊垣を しるくもあるかな
室町時代の『慕景集』に
社卯花
卯の花も けふの祭に あふひ草 月の桂の 色にまされる
などと、詠まれた「卯の花」と同じ花を補植して下さい、とお願いしたところ、御手洗の池の卯の花は、外来種との混合であって、日本の原種とは、ちがう、と仰り自ら植木職人を指導して植栽されたのですが、どうしたことか、花も実も付けなかったのです。先生に咲かない卯の花があるのですか、といじわるを言ってみました。何度か、確かめにお出でになったのですが、残念ながら、ご高齢であったため、咲くところを確かめていただけないでいます。
今年の春先も、気になって、見に行ったところ、卯の花どころか、すっかり刈りとられていました。刈るのは、秋口ですから、と思い疑いつつ、近づいてみると、秋に刈ったのか、今年も、だめ、と思って、植木職が刈り取ってしまったのか、わからずじまい、でした。
おそらく、楽しみにしていただいた方がおいでだろうと思いますので、秋まで待って、状況をみながら、回復を試みたいと思っています。
しばらく、おまちください。