先に、この欄で記したように下鴨神社の正月神事は、十二月十二日から始まります。しかし、いくら年の暮れといっても里人たちはその気にはなれません。鴨の暦では、冬至が一年の晦日ですから、冬至を迎えればどの家でも正月行事を始めます。それまでは、正月を迎える準備をします。
以前に、この欄で書いたと思いますが、屋敷の門口に八角(はっけい)といって、約一間ほどの青竹の先に約一尺くらいの榊(さかき)の小枝、八本を竹の切り口に並べるようにして麻緒で括ります。それの上を蒲(がま)か、弧も(こも)(わらで編んだ敷物)で巻き、コヨリで八カ所、間隔をおいて括ります。榊には、二垂れのシデを一枚ずつ、八枚、掛けます。何もかも八という数にこだわりがありそれで、この名があるのでは、と思います。門口、門扉の脇に台を置き立てます。むろん、台もまた八角です。お祭で潔斎(けっさい)(忌みこもり)中との標しです。
門を入った玄関の両脇、式台の玄関ならば式台の上に、いきなり玄関扉の家ならば入り口扉の両脇に歳木(としぎ)を立てます。歳木とは、歳神(としかみ)さんをお迎えする依代(よりしろ)(御神霊がより所とされるしるし)です。大きさは、玄関扉や式台の規模によって、加減しますから、一定はしていなかったようです。二間まぐちの式台ならば、二尺の高さの歳木が普通でした。
直径約二尺のたが(おけをしめる竹の輪)に細竹(おなご竹)を四十八本立て、上を麻緒で巻つけて括ります。その上にしめ縄を掛け二垂れのシテを四十八枚つけます。この数も鴨の暦によって定められています。
新年は、亥年(いどし)ですから、下鴨神社御本宮の前、二言社(ふたことのかみのやしろ)大物主神(おほものぬしのかみ)さんです。
神棚の間には、元日に日を迎える神事のため、檜扇(ひおうぎ)を準備しておきます。
長くなりますので、家の設えについては、また別にします。