またまた、ずいぶんご無沙汰してしまいました。たしか、正月のお話しの最中だったと、思います。それが、葵祭の時期になってしまいました。つい締め切りの原稿が多々在り優先せざるを得ないこと、お許しください。
ちょうど、今時分は、花供養の日、花御堂の仏さまのお祭の頃です。お釈迦さまに甘茶をかけたり、お花の御供えをしたり、とお花の香りがこもるなかで美しいお花とともに過ごせるひとときが懐かしい思い出となっています。
今もってその頃の花祭りの「おさがり」を「はなくそ」と呼んでいたこと。子供のころは何の疑いもなく「はなくそ」などと呼んでいたおさがりをいただくのが楽しみで、モクレンの紫や白の花と赤い大きなツバキにユキヤナギを添え花束にしてお寺さんへ御供えに駆けつけた思いがあります。
はなくそ、とは何ぞ。子供の頃は、その詞が面白くてはしゃいだものです。「はな」は、花。「くそ」は、供(く)。で、御供え、のこと。と云われていました。京ことば、とも云う人がありますが各地に例があるようです。
間なしに、下鴨神社では葵祭です。下鴨神社では、正月は、正月のおさがり「うしの舌もち」、葵祭は、葵祭のおさがり「吹き上げ」、「すはま」「はっけい」等々。みたらし祭りは、みたらし祭りのおさがり「みたらし団子」等々、と年中のお祭ごとに伝統のおさがりをいただきます。
おおかたの神社は、「おさがり」のことを撤饌、とか、神饌、と呼んでいますが下鴨神社では、神餕(しんしゅん)と書いて「しんせん」と呼んでいます。ささげもの、とか、神さんのあまり物、などの意味ですが、実は、下鴨神社の御供えは、かならず一膳分を予備として準備します。それを「用膳」(ようぜん)と呼んでいます。その用膳は、神さんのものであり、人々のものでもあり、鳥や動物のものである、と氏人たちは云っています。御供えの目録に「おさは」と云うお品があります。それと、同じような意味合いをもっています。それをいただいて、家の神さんへ御供えする、ということです。