糺の森の雪を絵にしたり、歌に詠まれたりなど、歴史的にみるとたくさんみられます。文学や詩についても、古い時代から現代に到っても読まれています。なかでも、写真の雪景色の名作は、多いようです。
平安時代の歌集に「増基法師集」というのがあります。そのなかに
十月賀茂にこもりて暁かたに
瑞かきにふる初雪をしろたへの木綿してかくとおもひけるかな
旧暦の十月を新暦になおすと11月になります。こもりて、とは参籠して、と言うことで、下鴨神社は、治承3年(1179)4月23日より5日間、後白河法皇が御参籠御幸されて以来、制度化され定例となっていました。あけかたに、詠まれたお歌です。
明け方に、外を眺めると、木々に初雪が降り、白い木綿幣がかけてあるように思はれます。
とのお歌です。旧暦の10月は、新嘗祭、相嘗祭、河合社官祭卯の日の神事、賀茂臨時祭と四度にわたって官幣が奉られる祭事があり、その前後には、院、上皇、法皇は、御幸され御参籠御参拝されてまいりました。
御参籠になるのは、鴨社神舘御所あるいは、鴨社頭賀茂斎院御所に設けられました。
ところが、こんなおもしろい歌があります。室町時代のことですが、今川氏真詠草、と言う歌集に
社頭雪
烏なくかたをたゝすの杜の雪に影ほのほのとあける玉垣
春の糺の森は、葵祭をはじめ華やかな官祭でにぎわう神域も、秋は官祭が続くとはいえもの静かな祭事ばかりで、どちらかといえば、瀬見の小川のせせらぎに物思いのとき、糺の森の烏が鳴き、樹々の梢は雪にうもり、朱の玉垣がほのぼのと印象的にみえる、と詠んでいます。